先日の日曜美術館で見た戦地へ出向く前に
裸婦像を描いた東京芸大の美大生とモデル
の話には感動しました。

絵を描き始めるとモデルの女性は、はじめ
ての経験だったので、あまりの恥ずかしさ
と緊張で泣き崩れてしまいました。

美大生は、絵具だらけの手で、彼女を優し
く抱き抱え「僕が一人の絵書きになるには
貴女の裸婦像が必要なんだ」と懇願しまし
た。

モデルは、その言葉に勇気を振り絞って立
ち上がり、最後まで役を全うしました。

どことなく緊張した、しかし凛とした初々
しい裸婦像が完成しました。

二人は、その後に恋仲になりましたが、彼
は、しばらくして戦地へと旅立ち、二度と
帰らぬ人となりました。

その裸婦像は、７００点を超える戦没画学
生の遺作を所蔵する『無言館』に展示され
ました。

戦後50年目に、一人の女性がその絵の前に
立ちました。その女性は、絵のモデルを務
めた女性でした。

すっかりおばあちゃんになった女性は、
その絵をしばらく眺めた後に、感想文をし
たため帰っていきました。

そこには、彼女が、あの一瞬の青春のきら
めきを大切にして、独身を貫いたことが書
かれていました。

一瞬が永遠となる。

男女の関係は、それほど深い影響があるこ
とを表していると思います。